「ファミリーハウス」と「トータルケア」
(愛媛県小児科医会会報2001年秋−41号より許可を得て転載) |
| 副理事長 大藤 佳子 |
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| 「ファミリーハウス」とは、慢性疾患をもつ子どもやその家族が我が家のようにくつろげる滞在施設のことです。1974年アメリカのフィラデルフィアでアメリカンフットボール選手として活躍していたフレッド・ヒルの愛娘が白血病にかかり、フィラデルフィア小児病院に入院することになったのがハウス誕生のきっかけです。彼は病院の近くに家族が少しでも安らげる滞在施設ができないものかと考え、近くのマクドナルドのフランチャイズオーナー、病院の医師、そしてフットボールチームの仲間の協力を得て募金活動を進め、世界初の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が誕生しました。今では世界に20カ国213カ所の建設が進められており、日本では日本マクドナルドが1999年に財団法人を設立し、この2001年12月東京の世田谷に第1号ハウスがオープンします。 |
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| 2002年3月に開院予定の国立成育医療センター(仮称)の隣接地に位置し、日本で初めての本格的成育医療の支援を行います。マクドナルドハウスが誕生するまでにも、1991年東京の国立がんセンター中央病院(愛媛大学の石田也寸志先生が骨髄移植の研修をした病院)の医師と小児病棟のお母さんたちによって、付き添いの家族のための滞在施設「愛の家」が作られました。多くの困難の中、個人のご好意により自宅の一部を開放するような形で始まり、その後その運営委員会は1999年にNPO法人「ファミリーハウス」となりました。造血幹細胞移植や複雑心奇形の手術など難病の治療が都市部の専門病院で盛んに行われるようになったのを背景に、日本全国でそういった滞在施設の必要性が認識され、今では80カ所以上の滞在施設が運営されています。 |
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| 1998年当時の厚生省は「家族の経済的負担を軽減するとともに、入院児童の情緒不安を解消するため、家族が宿泊し、子どもと親子のふれあいができる部屋を医療機関等に整備する」ことを目的として、第3次補正予算で緊急経済対策の一環として19億円(各県3000万円)を計上し、滞在施設の設置を促しました。これを受け、愛媛県でも松山赤十字病院の小谷信行先生がそういう施設を作ろうとされましたが、運営・管理上の問題があり実現しませんでした。 |
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| 一方、「トータルケア」の概念は1960年代後半にボストン小児病院で作られ、小児がんの子ども達の診断、治療、そして家族の支援において、医師、看護婦だけでなく、心理、教育、栄養、その他の各方面の専門家によるチーム医療の必要性が説かれました。診断時からチーム医療の整った施設で治療された群と途中から転院してきた群との比較で、生存率に89%と39%と明らかな差があることが示されたEBMのはしりともいえる研究が基礎にあります。小児がんに限らず、病気や障害をもつ子ども達やその家族ができる限り良好なQOLを維持するためには、チームを組んでの包括的で適切な援助が必要です。また、慢性疾患の患児に対しては、少なくとも成人して親の世代になるまでのフォローも必要です。国立成育医療センターは、トータルケアを実現するための病院であり、また救急医療の体制も整えるということで、本当に子どものためを考えた病院のようです。 |
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| 愛媛県では1996年から小児の骨髄移植が始まるなど専門的な医療が可能となりましたが、成功の鍵となるチーム医療や家族を含めたトータルケアの体制はこれからです。特に、ソーシャルワーカーやチャイルドライフ・スペシャリスト(いわゆる病棟保育士)・院内学級などは、病気をもつ子どもや家族にとって、前向きに病気と闘うためにはなくてはならない存在です。(院内学級は、愛媛大学病院・県立中央病院にもでき、入院中の子どもたちが元気に通って心の支えになっています。)しかし、県立中央病院のソーシャルワーカーは、成人を中心に考えられており、子どもと家族のためのソーシャルワーカーの実現を切実に望んでいます。 |
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| こういう状況の中、「愛媛ファミリーハウスをつくる会」は、2001年4月にチャリティーコンサートと「ファミリーハウスをつくろう集会」を開催して賛同者を募り、難病をもつ子どもと家族の支援を目的に、5月民間の非営利ボランティア団体、いわゆるNPO(Non-profit
Organization)として産声をあげました。その半年ほど前から、育児休暇中の私は、がんの子供を守る会の方々とゆっくり話をする機会がありました。がんの子供を守る会には、東京の「愛の家」設立に携わった方や滞在施設がない頃に東京で移植を受け苦労された方もおられます。また、子供を亡くされ、同じようなご家族のために何かしたいと参加されている方もおられます。「ファミリーハウスが愛媛にあったら、どんなに救われる家族がいるだろう」と話をし、滞在施設として使っていただきたいと施設の提供を申し出ていただいたのが設立のきっかけです。 |
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| お話を聞くなかで、今の医療が依然として医療者中心の体制から脱却していないことを痛感しました。そして、難病をもつ子どもや家族の現状・苦労をまわりの者(医療関係者や行政を含めて)や一般の人々が本当には理解できていないと感じました。その原因のひとつに、私たち医療者が改善したいと思っても、なかなか患者中心の医療への転換は難しいこと、また医療者側と患者・家族を結ぶ機会がなかったことが挙げられます。少しでも患者中心の医療に近づくため、医療者と患者を結ぶ架け橋として、愛媛ファミリーハウスをつくる会が誕生したのです。 |
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| 会長は松田博先生にお願いし、会員は小児医療にかかわるもの(医師・看護婦・福祉関係者)、子どもの難病と闘ってきた家族、そして一般のボランティアの方々で、皆が一会員として参加してます。将来、共有スペースを兼ね備えたファミリーハウスを建てることが大きな目標ですが、現在は賛同者から松山市窪野町の施設をお借りし、「いこいの家」として運営しています。また、マクドナルドの財団から助成金をいただいき、県立中央病院近くにも滞在施設を借り、短時間の休憩・入浴・洗濯などのためにも利用できるようにしました。実際の運営には、会員や登録してあるサポーターの方々がボランティアとして携わってくれています。単に滞在施設としてだけではなく、難病をもつ子どもや家族の交流の場・情報交換の場としても利用してもらい、少しでも心が癒される場なれば幸いです。 |
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| 今後は会として難病に関する親の会などの情報を収集して、相談があった場合には親の会の紹介なども行っていきたいですし、ソーシャルワーカーの方が関わってくださるようになれば、相談事業も行いたいと思っています。愛媛県の小児慢性特定疾患として申請している患児は、表のように平成12年度では合計1,071名います。悪性新生物・血液疾患が約4割を占めますが、他にも様々な疾患があり、それぞれにご家族の苦労があることと思います。愛媛ファミリーハウスをつくる会は、疾患の限定はせず、相談があればできる限り対応したいと考えています。また、ホームページを作れる方が参加して下されば、情報の発信と家族の声の収集に威力を発揮するだろうと考えていますが、今はまだ実現していません。 |
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| いろいろな活動を考えてはいますが、まだまだこれからというのが現状ですので、愛媛県小児科医会の先生方にも、是非お力添えいただければ幸いです。私の夢は、東京の国立成育医療センターとマクドナルドハウスのように、愛媛にも成育医療センターとファミリーハウスが並んで建設されることです。また、子どものためのコンサートを今後も開催したいと思っています。子どもたちの将来とQOLの改善のために、今後ともご支援を宜しくお願い致します。 なお、愛媛ファミリーハウスをつくる会事務局は、いのうえ小児科内(〒791-0216温泉郡重信町野田2-485-1 TEL/089-964-7242
FAX/089-964-7254)にあります。ご意見などございましたら、事務局か直接大藤までご連絡をお願い致します。 |
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